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2006/5/1−4GW:高知松山怪の爪あと

予告どおり夜行で高知へ。高知と松山+αを廻ってまいりましたが、中から怪異関連の部分だけ。

まずは赤岡町。

絵金と絵金まつりについてはソレ関係の書籍でもあたってください。「血赤」を駆使した残酷庶民画で知られる幕末のすぐれた絵師です。怪異絵師としては同門の後輩河鍋暁斎とはまた違ったアングラ的というか直接的なサイケ芝居絵を得意としました。どぎつい。だから海から上がってくる死者を追い払うために「使われる」ようになったのです。地歌舞伎のかわりとして富裕庶民に愛好された芝居屏風を各家に残しただけでなく、夏まつりで鎮守の参道や相撲土俵脇に置かれる大絵馬提灯なども残しています(というか廃棄が惜しいので残された)。この町には他にも奇なものがあるようですけど、時期外れはちょっとさみしい感じ。廃寺あとに墓石が乱立する薄気味悪い場所もあるとききましたが(秀吉朝鮮出兵のさいの死者を弔ったものだそう)時間がありませんでした。

高知市内です。時間の都合で廻れなかった場所は敢えて示さずにさくっと。

風光明媚な五台山。

ここに明治初頭設立された西洋式医院。もともと攘夷論さかんな山間地で「あの蛮人医は若者を殺し油を搾り取っている」という風説が流れ、あるいは魔術で「ヘイムシ」という吸血虫にされてしまうといわれ、遂に一揆が起こった、これが有名な「脂取一揆」です。田中貢太郎も実録を残している。

五台山にはいくつか史跡がありますが、何故かここに興味をひかれました。あきらかにイワクラです。

大岩から泉が湧き出ていますが弘法大師ゆかりとか?

じつに神秘的でした。なんのへんてつもない場所なんですが。

五台山頂にある八十八ヶ所で知られる竹林寺、ここには猫関連のものがあります。

アラーの名の入った魚とか、このての話は世界中にありますが、「なんでこの古寺に招き猫が???」という意味でも面白かった。

いかにも古寺ふうで、いいお寺です。夢窓国師の庭にも南国の植物が使われている。

さて、川の多い土地ですが、いくつかの川の交錯する八洲は今はちょっと残念なところもありますが、かつては風光明媚で知られた場所でした。

今は弁天観音さんの仁王扱いですが、これが怪奇ものを得意とした実録作家田中貢太郎の一派が意気をあげたことで名を残す「八洲さま」、おたぬきさんです。

博浪会の面々がこの川辺に集まったわけですね。

高知でいちばん有名な怪異は?地元出身の物理学者寺田寅彦が書き記したことで有名な「ジャン」ではないでしょうかね。

この湾口(正確には外海への湾口ではなく浦戸湾の「くびれ」にあたる狭い部分)が渡合もしくは孕と呼ばれる場所で、シンバルを打ち鳴らしたような、あるいは空鉄砲を打ち上げたような「じゃん」という謎の音が響いたという。これが鳴ると魚が一切とれなくなる。

このかなり「工業化」された埋め立て地は砂浜でした。「自由の松原」と呼ばれた場所がこの先にありますが今は完全に壊滅しています。

非常に狭い湾口で、寅彦が指摘した海底地形の変異現象の他にも原因を探れそうな気がします。今回行けなかった向かい側の岸にもいくつかふしぎポイントがあります。

このさらに先に行くと海岸はかなり埋め立てられ新興住宅も増えてはいますが、依然古い雰囲気を残した仁井田に入ります。

貢太郎の故郷です。

仁井田には巨樹がいくつかあり、中でもこの仁井田神社の大楠が名高いものです。もっとたくさん生えていたといいますが台風などで今は数は限られています。力がありますねえ。

仁井田の先(東)へ向かうと学校のむこうにこんもりとした茂みが。裏山に沿う形でひっそりと残っている。

ここが「松原の怪異」に取り上げられた「聖神」、聖神社です。今はかなり拓けている中にあるだけにちょっと往時の状況を想起することはできないが、よくよく見るとなかなかに雰囲気のある場所です。

何かあるんでしょうね。

手水鉢が海石であることは全国海沿いの部落では珍しくないことだが、それにしてもここまで変形していると手水鉢にならない。というわけで逆側にちゃんと手水鉢が設けられています。

猫が古株でしきりに爪を研ぐ。

目の前に松原はもうありません。しかし一応「立ち入り禁止」の林があります。

「松原側」から見た聖神。このあたりにあった松林に怪異が頻発していたという。詳しくは別項の「松原の怪異」を参照。

更に海側から遠景。笑い婆が出たという松林を抜け、このへんが砂地の空濠になっていた場所でしょうか。土俵があったという。

さなればこのあたりの上空から「笛や太鼓」の音が鳴り響いていたということになる。背筋に何かが走る。

聖神脇の楠も仁井田神社のものと並び古い巨木ですが、これが「松原の怪異」に出てくる血を流す楠木でしょう。

そういえばこの捻れた木も気になった。

実はここはもう田中貢太郎の生地のすぐそばなのでした。地元ネタを書き留めたものなんですね。

田中貢太郎誕生の地の碑。全く知られていませんが、田中家は現存してるはずです。

墓もすぐそばに設けられましたが、戦時中土地接収され、移転を繰り返して今はさんごセンターの手前の砂地に乱雑に集められた中にひっそりとあります。墓地名ははっきり決まっていないようで、事前に探すのに少し苦労しました。墓地公園と称していますが、たんなる砂浜です(海側は埋め立てられているので海に面してはいません)。実際行ってみると場所は幹線沿いでわかりやすい。中でも背の低い古い墓石を探せば南西寄りにすぐ見つけられるでしょう。

墓裏に赤い蝶がとまりじっと動きませんでした。

武市姓が見えますが、聖神より更にしばらく東へ行くと武市瑞山生家があります。

ある意味怖かった浦戸大橋。

渡ると向かい側の外海沿いが桂浜になっています。

ここに田中貢太郎の記念碑があります。大町桂月の碑の上。

桂浜からすぐ西に、少し雰囲気のある場所があります。

次は室戸岬です。空海関連のものが多いですが。かなり荒々しくまた観光化がされていない地域で静かに歩けます。

とりあえず岬の先。褶曲地層の海食様が凄まじい地獄景色。灌頂ケ浜は弘法大師の儀式あと。

弘法大師の功徳をまつった岩などが散在しているが、やはりどうしても仏教色が濃く怪異的には今ひとつな感もある。

目洗いの池。弘法大師の功徳で目に効くという。

弘法大師とは関係の無い土着のものもある。これは漁師さんの信仰を集める竜宮神。いわくらに湧水、典型だ。

南国らしい風景です。一本の木だそうです。キジムナでもいそうですね(木はアコウです)。

いくつか岩窟があり、弘法大師の篭ったものとも言われています。

捻岩。「異変」とは??

岬上の東寺。

ここに室戸でも指折りの不思議物体が。鐘石です。

書いてあるとおりで別に不思議ではないものの、何か仏具を叩いているような金属質の音は、まだ生々しかったころの日本仏教の土俗をあらわしているかのよう。

こちらは室戸で一番哀しく怖かった。

こちらはかなり汚い水ですが、弘法大師が行水をしたという海食池。

弘法大師の篭った洞窟。

左手のもの。これはさすがにちょっと怖い。蝙蝠の声がひっきりなしに聞こえる大きな海食洞窟。水がボタボタとかなり強く降り注ぐ。

右手のもの。

室戸で最も有名な不思議物件はこの天狗岩でしょう。

まさにガイジンさんみたいでいかにも天狗です。人面にも程が有る。しかし、

正面はこんな。火星の人面岩と同じ仕組みなのですね。

<つづく>