第四十六夜、橋の家族
(1991記)
イギリスはオックスフォードの話。
19世紀もおわり近く、とある日。バードン・ハウスに住んでいたある一家が、馬車に乗って散策をしていた。ロング池の橋にさしかかったとき、突然、橋が崩れ落ち、一家はみな暗く淀んだ水の中に呑み込まれてしまった。
やがて水死体がつぎつぎと引き上げられ、バードン・ハウスの庭にあるサマー・ハウス近くに埋葬された。後にナンハム公園に埋め直されたのだが、彼等の墓はまたも開かれ、バードン・ハウスに最後の安住の地を定めることになった。そのいわくについては定かではない。
その家族が、今もオックスフォードの人々に目撃される。
不吉な馬車に乗った幽霊一族。
陸上の古橋・・・かつてロング池に架かっていた廃橋を横切り、彼等の世界の「馬車道」を進みゆく一家の姿を見るものは、今もって、後を絶たないと、いう。
〜ジョン・リチャードソン「その一歩向こうに」オックスフォード出版 より抄訳