第三十四夜、髪女
国東をまわっていたとき、岩戸寺へ向かう途中に聞いた噺。びしゃもんバス停そばのチョウケイ寺の住職さんが語ったという。住職は比叡からやってきた徳のある方だそうである。
ある人、夜中ふと目をさます。
ばさ、ばさ、ばさ、ばさ
何かが障子に当たる音がする。
ばさ、ばさ、
見て驚いた。女の髪を振り乱したシルエットががっと障子に写り込み、その振り回す長い髪の毛が、障子に当たって
ばさ、ばさ、
と音をたてていたのだ。そして髪の毛が当たるたび、少しずつ、障子が開いていくのだ・・・
心当たりがある。掛け軸があった。若い女に殺された本妻が、憑り殺した女の首を持って立っている絵。にたりと笑う凄まじさは悪女サロメを思わせる意匠だ。住職は画家の念が篭ったものとみて回向をした。そうした夜、女は満足した様子で、住職と持ち主の夢に顕れた。この寺におさめてほしいという懇願、住職は聞き入れた。3月10日にはじめてもちこまれたということで、毎年3月10日に開帳をする。蝋燭の灯りで見せるという。
大分女は怖い。アラユル意味で・・・!
(1999/5旅行中記)