第二十二夜、凄惨
或日光圀父に従い斬囚を桜馬場に見る。
其の夜に父、光圀へこう命じた。
「昼の斬首を提げて来い」
馬場は館の西南にあって樹木鬱蒼とし、夜は暗黒、恐ろしいことこの上ない。
しかし光圀直ちにこれに赴き暗中模索、遂に首を見つけると、あまりの重さに髪を引っ掴み、引き摺り引き摺り、何食わぬ顔で父君の目前に現れた。
父直ちに刀を賜いてその剛胆を称えた。
光圀、生まれて僅かに七年也
(内外古今逸話文庫明治27年刊より)
*光圀:御老公こと水戸光圀公、黄門サマのこと。