2006年3月17日

クリプトズオロジィなるもの

スコッツマンの「魔術とミステリー」コーナーにクリプトズーオロジィにかんする紹介記事があった。クリプトズーオロジィドットコムのHPで知ったんですがなかなか面白いインタビュー記事になっているので適当に抜粋意訳してみます。

「海からやってきた説明のつかないモンスターの謎」


クリプトズオロジィ(未知動物学):奇怪な科学のための奇怪な単語。ネス湖のモンスターやファーに覆われた鱒から数百万種の線虫などさまざまなもの、それが実在しないか一部は実在するかに限らず研究しようというこの分野に焦点を当ててみよう。単に未知の生物を研究するという意味で、クリプトズオロジィは広い範囲をカバーする科学であるといえる。知る知らないは別にしてとにかく誰かに未知と認識されたものについては対象範囲であり、科学権威がないがしろにしてきた海の怪物や幻想といったものも含まれる。

Dr Geoff Swinneyはスコットランド国立博物館の下等脊椎動物、魚類、両生類、爬虫類に関するキュレイターである。同時に、以下の「彼ら」・・・彼に言わせれば「いつかは動物として認められるかもしれないものたち」が居住するクリプトズオロジィ分野の研究者でもある。彼は新種の蝙蝠からでっちあげの剥製までを守備範囲としているのだ。



「全てをカバーします」スウィニーは語る。「一つの目的は学界に研究されたことのない動物たちを明るみに出すこと、もう一つの目的はこの捏造人魚のようなものを我々が持っているという事実、そのものです」スウィニーは硝子の瓶を取り出した。机の上に置かれたそれは奇妙でグロテスクなものだ。小さな人魚、背中には脊椎骨の刻むでこぼこが連なり、古代の革製品のような質感の頭には一そろいのアルザス人より凶暴な歯が並んでいる。これらの生き物は19世紀にセンセーショナルに現れた。サーカスのパイオニアとして知られるバーナムがfeejeeフィージー人魚を見世物に出したとき、観衆はひどく沸いた。誰もそれが偽物だとは思わなかった。スウィニーはこれが何かは明らかだと説明する。「本物の魚、ベラのようなものに紙か何かの張子の頭をくっつけ、歯だけベラのものを植えたのです」(訳注:スコットランド博物館所蔵のものは明確に「日本の人魚」と注記されているので、たぶん典型的な捏造人魚、即ち鯉と猿のキメラだろう)

これが偽物であると科学で明かすことによって、何も面白いことにはならない。スウィニーは騙されやすい人々を騙す目的だけでこれらの人魚が作られたとは思えない、剥製師の冗談以上の何かがあると信じている。「取るに足らない目的のために作られたとも思えない。別の目的があるんではないでしょうか。例えば海への奉納物として流された、というような。とても興味深い。(訳注:日本産のものは明確に輸出品であったが因果応報の説教のため寺院で使われた例も多く、転じて宗教的偶像そのものになったものもあるからあながち外れた見解ではない)」

世界的に有名なクリプトズオロジカルな動物はいくつか知られている。ヒマラヤにはイエティがいる。アフリカにはNinki-nankaがいる(ガンビアの翼手竜のようなもの、gamboとも呼ばれる。とりあえずフォーティアン・タイムズの記事にはNinki-nanka、kikiyaon、guiafairo、sasabonsamの名も見える)。アメリカにはビッグ・フット、そしてここスコットランドには最もよく知られている・・・ネッシーがいる。

「ネス湖の怪獣はクリプトズオロジィの古典的な例です」スウィニーは言う。「写真をもって公式に明るみに出され、将来発見されるときのために保護する目的で学名もつけられています」

スコットランドには他にも沢山の神話上の海の怪物がいる。スコットランド博物館内のこの狭い部屋に、唯一の海の怪物の残滓がある。

ストロンセーStronsayの獣は1808年の冬の嵐でオークニー島に打ち上げられた。地元の漁師は海の専門家にもかかわらずこれをわけのわからないものとみなした。この事件はイギリスじゅうの話題となり、エジンバラやロンドンから科学者がオークニー島を訪れた。しかし肝心の生き物は同じ嵐で再び海に流れ去り、彼らが目にすることができたのは破片だけだった。島民は獣について説明した。長さ17メートル、長い首に6本の足、及び毛深いたてがみを持っていたという。髪の数本といくつかの脊椎骨がエジンバラに持ち帰られた。ロンドンの科学者、エバラード卿はロンドンに頭蓋骨を持ち去った。スウィニーは次に何が起こったかを説明する。

「この動物は騒ぎになり国境を挟んで(訳注:スコットランドとイングランド)学会を二分する論争が巻き起こりました。スコットランドではこれは未知の動物であるとして学名Halsydrus Pontoppidaniが与えられた。これは18世紀に海の怪物を目撃し記録したノルウェーの司教の名に従ったものである。しかしエバラードはそれがウバザメであると主張しました」

これは1987年にスウィニーが脊椎骨を分析にかけるまで謎とされてきた。結論は、ウバザメだった。怪物の神話は崩れた。スウィニーはクリプトズオロジィの役割の一つは興ざめな奴になることだと認めた。

<毛皮に覆われた鱒:ウサギの毛皮に覆われた鱒は剥製師の悪ふざけの産物である。>

恐らくエジンバラで最も有名な標本は極めて奇妙な合成動物:毛皮に覆われた鱒だ。昔、女性が博物館に持ち込んだものである。彼女は毛でも生やさないと冷たくて仕方ない湖の話と共にこれをカナダで購入したという。

彼女の持っていたものは楽しませるか馬鹿にするかの目的で作られた剥製師の仕事であった。ウサギの毛皮で覆われたニジマスだったのだ。彼女は怒りのままこれを博物館に委託した。剥製の上を多くの年月が哀しげに過ぎ去った。

後日、偽物の動物をまとめた本が出版されたさい、読者はみなこの博物館の毛皮に覆われた鱒を見たがった。博物館は読者を失望させないように、新たに剥製を作りあげた。この魚は広告塔となり、沢山の人が実物を見に博物館を訪れた。オリジナルの製作者がそれを聞いて、博物館のためにもう一つ作ろうかと申し出てきた。この「落ち」はスウィニーをとても喜ばせた。

「今、私たちは偽の偽物と偽の偽物の偽物を持っているのです!」

(DIANE MACLEAN 2006/3/16)


〜以上はクリプトズーオロジィの立ち位置を非常によく示している。言うなれば旧来の「UMA(サネヨシ先生の造語だ)」という動物学的な捉え方とは異なったものなのである。前にもアメリカの有名な研究家にして収集家ローレン・コールマンさんのブログを紹介したが、彼もクリプトズーオロジィを一種のアートと捉えているところがある・・・夢は夢として持っておいて、現実との「折り合いをつける」ために。私も賛同します。所詮あいまいなものはあいまいにしておくべきなのだ。時々検証すればいい。