下北出身の旧い方の妖怪考に以下の説があった。戦前戦中の話が多く原話に近いものが多いと思われるので参考に語についてのことを書いておく。

おやま=恐山(オソレヤマ)の略
イタコ=委託巫女、つまり委託されて霊をおろす人。70年代まで恐山は鄙びた地方信仰の場所でしかなく、冬は地元の管理人一人残して僧みな降りて据え置かれた。地元ではおやまにのぼる際に肩に重みを感じてそれが新仏とわかったなどという話はあったものの、霊の「実見」話についてはほとんどが聞き込みに来た雑誌記者のデフォルメしたものらしい。「山内に散在する湯屋に霊が入っていくのを見た」「本堂の前でそれぞれの往き先へ別れる」など実在のない話とここでは言われている。青森の混交仏教界では、霊はあくまで気配までしかなく実見はされないもののようだ。主として人にとりつき地元の住職に落としてもらう、狐と同様のものであった。ちなみに恐山菩提寺は通称であり山麓むつ市中心にある円通寺が今も管理をしている。下北に寺はいくつかあるが宗派の壁をこえて土俗一様化している。
こっくりさん=知恵のある動物とされた狐、狗、狸をそれぞれ一本の細竹に憑かせて、三本交叉して束ね、上に盆を置き三人が円座でその端に触れる。その傾きで吉凶などを占う。戦国時代伝来と維新後伝来の二説がある。
座敷わらし=間引きで死んだ子
雪女=吹雪で子を失った母の子を求めてさまよう霊(*これは多摩川沿いのミカワリバアサンの説に似ており、ミカワリバアサンの名はバリエーションがあって「身代わり婆さん」という説もあるが、子を川でなくした母が老いて死んでもなおさまようという話である(川からはなれ東京一円に拡がった伝説らしいが)。ついでながら多摩川より神奈川側から東京側へ雪女が来るという伝説がごく上流から河口近くまでえんえんとしてある。江戸時代に小氷河期のような時期があったとの説もあり、今よりずっと雪が降ったというから今はひらけた下流近辺でもあながちありえない話ではないらしい)

(参考:「幽霊・妖怪考」祐川法憧)