2005年10月11日

芸人都市伝説とフリーメーソン

どうも作家臭のするダウンタウンDXの定番オカお題でおぎやはぎの小木がよく「吹いている」が、矢作は矢作で別途オカ的なことに興味があるみたいです。キリストの墓にバスで行った芸能人が矢作だったかどうかはともかく(青森の記事参照)「やりすぎコージー」で芸人都市伝説というお題でしっちゃかめっちゃかな胡散臭い話題がやりとりされる中、矢作が小木の話として語っていたものだけはいかにも「都市伝説」チックで面白かったので、片方は怪物図録へ、もう片方はこちらへのっけておく。しかしこんな「マジメな」都市伝説を芸人番組でやるというのもいかにもおぎやはぎらしいなあ。矢作の喋りはどうもヘタでつじつまがおかしいけど、内容は「ネタかどうかはともかく」面白いと思った。夜のコールガールという話。

小木はかつてハワイに住んでいた。小木が借りた家、扉を夜中に叩く音がする。どろぼうだ、ととっさにカーテンの陰に隠れると、女が入ってきてシャワーの扉を開け閉めしたりなど何かを探している様子。コールガールっぽい。勿論呼んだ覚えは無い。こっそり硝子戸の外へ出、目をあわせないように気をつけて中をうかがう。だがついついじっと見入ってしまい・・・目があった!女、おもむろにカーテンをばっとあけた!女の顔が目の前に!目があってしまう!

「あってない!!」

小木はとっさにそう口走ったという。すると女、ニコリと笑うと、すっと消えた。

怖かったが、とにかくなんとかいなくなったということで、家に入り再び床についた。うとうとして・・・ふとガチャガチャいう音が聞こえ、またもや女が入ってきた。なんでだ?時計を見た。9時だった。

気が付いた。相手はアメリカ人である。「あってない」というのを「at nine」と聞き間違え・・・つまり「9時に来てくれ」という意味にとられてしまったのではないか。コールガールだから、時間にきっちり・・・

ここで話は終わる。編集の都合か、矢作の話にボロが出たのか。幽霊は言語の壁を越えるとはよく言われることだが、このような「ソラミミ」は寧ろ面白いというか、けっこうありうることなんじゃないか、と思った次第。もうひとつの「切り株女」はよくあるタイプの話であきらかに嘘だが、ひょっとすると有名な都市伝説かもしれないのでいちおう後日怪物のほうにアップしておきます。ちなみに小木の死神目撃談も既に以前載せましたね。

この「芸人都市伝説」先々週から先週が二回目だったが、一回目はいわゆるお笑い話だったので特に気にも止めなかった。今回、20ドル札と1ドル札(1935年のデザイン!)にまつわる「都市伝説」を扱っていたが、前者の「9.11の予言」なる話はともかく、後者の「フリーメーソンの紋章が入っている」話についてはちょっと補足が必要かもしれない。見ればわかるが現行のお札の裏面の左側に、13段の未完のピラミッドがかかれており、そのピーク部分に三角形が輝いていて、中に瞳が描かれている。何やら不思議な意匠である。「三角形に左目の入った」マーク・・・即ち「フリーメーソン(メイソン)の紋章」がお札に入っている。



このマークはそもそも米国国璽に用いられているもので、ユダヤ陰謀史観もしくはロックフェラー支配云々を唱える人にはおなじみで、アメリカひいては世界を影で牛耳る結社という話に繋がっていくまことしやかな噂を作る基になっている一つなのだが、まずそもそも「三角に目」、これは中世ヨーロッパでは一般に三位一体説を示すものでキリスト教的象徴であり、ユダヤ教の神の名と限定されるものではない(三という数字がフリーメーソンの秘儀的側面に大きな意味を持っており、他、ヒンズー教など他の宗教における三という数字の持つ大きな意味については話が逸れるのでここでは掘り下げない)。ピラミッドという石造構築物にいわゆる「万物を見通す目」、あきらかにフリーメーソンの象徴で、確かに国璽にそれが用いられるのは変なのだが、当の「フリーメーソン」、いわば「社長や学者や政治家の集まる高級社交クラブ」的な団体であり、大元は統一宗教的思想から生まれた「一神教的集団」であったからそれなりの秘儀に裏付けされてはいるものの、今や形式的なものにすぎず世界中にその支部を持ち公然と活動を行っており、洗脳したり陰謀したり悪魔信仰のような背徳的で怪奇な儀式を行うといった類いの宗教団体では全くない。現代では宗教は何でもよく(逆は制約があろうが)、とにかく何かを信仰していて、複数のメンバーに推薦され、メンバーとしてふさわしい人格や知性などを備えていると認められること(なんだかジェダイみたいだが、ジェダイ自体まさにここに発想の源があったといわれる)。それだけが条件である。宗教横断的宗教、というのが一番今のイメージにあっているかもしれない。そのためそこには様様な宗教要素の吸収された痕跡があり、象徴が含まれる。そこに「ユダヤの星」もあれば「ピラミッド」もあるのは道理だ。

審査という過程を経さえすれば非常に平等な集団であり、認定は一世一代限りで伝統よりもあくまで個人をみるというのもアメリカの根本理念に通ずる。アメリカ人にフリーメーソンが無茶多いというのは全く不思議はない。建国の父ワシントンからしてメーソンの頭領なのだ(白人を中心とした団体であるという点では差別的な側面もなきにしもあらずだが)。合衆国の中核を構成したプロテスタントの非権威的思想とマッチした考え方だったとも言える。現代アメリカに限らず近世ヨーロッパではフリーメーソンは至極一般的な団体で、モーツァルトがフリーメーソンのために曲を書いていたり(もちろん自身も加入していた)、多岐にわたる人々によって構成される、一種ギルド的な性向を持った集団の集合体だった(フリーメーソンは元は「自由な石工」という意味であり、中世ヨーロッパでその特殊技能ゆえに自由を与えられた強固で閉鎖的なギルドの存在を中興の背景にしている、描かれるピラミッドと目は「石をもって美しく高度な構造を作り上げることができる」という「高踏的な技術(ここに一種の「神格」が与えられ霊的意味をなす)」集団の象徴なのだ)。理念的な部分と実践的な部分で流派が別れていたが、今は一応それなりの格式をもった理念的な秘密結社(というよりSNS的と言ったほうが近い)の形をとっており、規則は象徴的なものに昇華されている。

活動内容を口外しないという点では一応閉鎖的であり、なにやら怪しげなことをしてるように見られがちなのだが、実はそうではない。メンバーに限らず外部に積極的に慈善活動を行っているというのもその顕れの一つである。もちろん厳密な階級構造があり不思議な儀式が設定されているという点では怪しげで、しかも確かにその中には霊的進化などといった秘教的意味が含まれているのだが、一般的に言ってそもそもこれは「伝統芸能」の世界と考えればよい。歌舞伎や茶道の徒弟制度や作法と一緒のものなのだ。違うのは世襲を否定している、それだけだ。数百万のメンバーが一斉に動けばそれは確かに権力にはなりうるが、そこまでの求心力は持ち得ない、結局「社交クラブ」のレベルなのである。だからメンバーの名前が堂々と公表されている。公表されているからこそ、ロスチャイルドはいなくてロックフェラーはいる、などといったことも知ることができるのである。余談だが薔薇十字団もメーソンに似た扱われ方をされている団体で、妖しげな小説漫画にはその名が刻まれていることも多いが、同様に「そんなに」奇怪な団体ではない。

フリーメーソンはそもそも14世紀に源を辿ることができ、「新興宗教」ではない。宗教でいう宗教改革的な過程もだいぶ昔に既に経てきており、「古来の秘儀を伝える怪しげ団体」というイメージは殆ど誤りである。長い歴史によって醸成された神秘主義的側面を持っていて、薔薇十字団やカバラなどの思想を吸収していった面もあるのだが、だからといってそれらは全て石工の習俗同様「象徴的なもの」として昇華され、即物的なものとしては捉えられていない。この暗示的表徴の中に西欧諸国に既存の各種宗教(ここにはユダヤ教のいわゆるカバラ思想も含まれる)の理念も平等に吸収されていると言うことができる。閉鎖的といいつつ中身は開放された団体である。

だが、アメリカ人が大多数を占める、という点には確かに注目しておく必要はあるかもしれない。フリーメーソンの生みの親でもないのに、お札に紋章を掲げた国、超大国アメリカ・・・(w