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自然人魚


生まれたときから話題のペルーの「人魚ちゃん」が無事手術で人間になった。
現代の人魚は魔法ではなく手術で人間に戻る。というか元から人間であると認めるべきなのだが、そういう報道をされてしまうことに若干の怒りと、自分がそう書いてしまうことへの悔恨の情が湧いてくる。でも書く。なぜならここは誰も見ていない個人的な吐露の場なのだから。

元ネタは例によってX51である。こちらもどうぞ。


<引用ココカラ>
人魚体奇形の少女、両足の分離手術に成功 ペルー
【DailyRecord】昨年ペルーにて誕生した人魚体奇形の少女、ミラグロス・ケロンちゃん - 通称"リトル・マーメイド" - が昨日、無事に手術を終え、ひとまず足の分離に成功したとのこと(写真)。施術を担当したルイス・ルビオ医師によれば、手術は外科医や心臓の専門医など11人の医師からなるチームによって行われ、4時間半に及ぶ手術の末、当初の予定であった膝までの分離のみならず、内股までほぼ完全に足を分離することに成功したという。「膝関節を独立して動かすことが出来るようになりました。手術はここまでのところ、完全に成功しています。」ルビオ医師はそう語っている。
<引用ココマデ>


水泳用のヒレに両足が一本になるように左右が結合したものがある。私の持っているヒレは左右分かれてはいるがマーメイドタイプといって両足を揃えてバタフライの要領で動かすと両足バラバラに動かすより強力な推進力が得られる(コツをつかめないと体が左右に揺れまくるが)。だからといってこの子は泳いだりなんかしたら大変だろう。生まれたときから一本に結合しているので、一本で泳ぐことに違和感はないだろうけれども。この子の手術はただの分離手術ではなく(脳畸形の分離同様)性器、尿道、肛門などが同じ一つの孔に集まっている、肝臓や消化器官の配置にも異常が見られるなど内部にも直さねばならない部位が多々あり、大変だ。この記事を読んで、それではステレオタイプの人魚の体内構造はいったいどうなっているんだろう、と漠然と思ったが、すぐに不謹慎と思ってやめた。

畸形話のついでだが、遺伝病の一つに指が多い多指症というものがある。たいていは5本のところ6本の指があり、左右対称にあらわれ、手足すべてが6本の場合もある。これは病気と言うより気質と言ったほうがよく他に弊害を生じる類のものではない。外部者向け医学辞典にもよく出ているもので中学校の図書室でも目にできるものである。先ごろテレビで白人のおじさんが6本指を披露していた。旅行好きで、アフリカに行ったところ部族の人に悪魔と呼ばれて怖がられたという。案外こういうところに宗教や伝承怪談の源流はある。別の場所では悪魔ではなく神の使いと思われたこともあるという。
:じつに9本の指を持つ足形土製品(三内丸山遺跡)
:土器の取っ手、6本指の足形(三内遺跡)
:参考、子供の足型をとった土製品(六ヶ所村、三内より時代は下る)、ちゃんと5本指です

日本にも稀にあると聞くが偏見の多い土地柄滅多に表に出ては来ない。縄文時代の土偶に扁平な足を模った石板様のものがあるが、主に青森で見つかっているものには「指の数が多い」ものが見られる。6本以上の指が刻まれているのだ。青森を中心とした縄文文化圏では独特の呪術が発達していたようで、三内丸山遺跡などを見るとたとえば数千年もあとのヤマトの埴輪にそっくりな顔が既にあるなど非常に興味を惹かれる造形が数々見られるのだが、この多指足の土偶などを観察するに、そういった普通の人間とは違った形質の人間が敬われていた可能性も考えられる(遮光器土偶が無頭症児の顔に似ていると昔から私は言っているのに誰も相手にしてくれない(泣))。今で言う「神の子」のものか。さしずめ釈迦の体中に現れた奇妙な文様や腫瘍のようなもの。悪魔か特別の力を持った呪術師やもしれないが。縄文文化についてはオカ的にも実に面白いので項を分けていつか書こう。
:ハニワ顔の土製品(三内丸山遺跡。シンプルだがじつに多様な顔が見られるのが中期を代表するこの遺跡出土の土偶の特徴。)
:遮光器土偶の一例(このての土偶は常に一部を欠いた形で出土する。普通に考えれば赤紙不動やおびんずるさまみたいな信仰の源流、即ち体の悪いところを投射して(欠いて)埋めることにより治癒を願う呪術だったということになろう。よく知られる亀ケ岡遺跡のものと微妙に異なるこの種のものは青森各地で出土している。これは三戸出土のもので幼児体型だが豊かな胸〜まるでアフリカの部族の女性のよう〜をもっていて、なんだか倒錯を感じるのは私だけ?縄文晩期ゆえ、かなり文化的に爛熟していた時期でもあり、いちがいに畸形を模ったとは言えないとは私も思ってます。)

多指症の人が左利き以上に生活に苦渋する場面も多いのはあたりまえか。ピアノなんかを弾くにはいいと思うのだが、左手だけの曲は数多あっても12本指用の譜面はないから難しい。でも、番組のおじさんはいたって能天気だった。これは差別的要素を孕む気質ではそもそもないのだ。顔が整っている、足が短いなどの気質の単なる一つの要素にすぎず、長所であり、短所である。それだけのものである。畸形話を出すと決まって不謹慎という指摘がなされたのも今は昔、サブカル流行り、見世物への郷愁が堂々と謳われるようになった現代、突っ込んだ畸形者論が現れても不思議はないのだが。勿論学問的でマニアックな研究はそっちで頑張ってもらうとして、一般レベルまで降りてきてもっと議論してほしいもんだ。アマチュアはそう思います。アマチュアにはできないシゴトですから。  
:びっくりしたなあ、もう