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2005年05月20日

謎のピアノマン顛末

最初ビリー・ジョエルが発見されたのかと思った。数日のうちに一気に日本マスコミの好奇の的となったピアノマン(英語ではpiano manとなっている)についてまとめていこうと思う。4月にイギリス南東部ケント州シアネスSheernessのSheppey島の海辺で発見された、ズブ濡れブランドものタキシード姿の記憶喪失ピアニスト、何故5月になって、という報道に謎が謎を呼ぶ典型のような動きをしているし、奇談のたぐいとしてここに載せても不思議はないはずだ。主部分は某所に書いたものをそのままのっけますが、他の人の書いた内容については骨子だけ引用します。

*この記事はワーク・イン・プログレスです。3日更新。

***
まずは最新情報的な部分を書いていこう(冒頭にも書いたとおり情報次第で随時追加変更していく予定です)。

チェコ人の元ロックキーボーディスト*という話が出ている。ポップス系ミュージシャンという線は私も勘ぐっていたのでかなり信憑性を感じる。当人の顔はチェコの新聞に載っただけでネットでは拾えなかったが、私には余り似ていないように思えた。チェコの有名ロッカーの話によるともうかなり前に一緒に活動したことのある人で、ピアノを弾いている姿がそっくり(ピアノを弾いているピアノマンの映像なぞが流出していたのか不明だが)だということだ。但し当局や病院はあまたある問い合わせの一つとして特に注目しているわけではない、としてあるいは否定的な意見さえ述べている。結局のところこの人間が同一人物である根拠は「イギリスへ行きたがっていた」ということと、ピアノの正式な教育を受けているというところに尽きるらしい。

以下引用。ZAKZAKより。

ピアノマンはバンドマン?チェコ出身との有力情報

元メンバー「彼は英国に行くのが夢だった」

ナゾを呼んでいるピアノマンだがチェコ出身との情報が寄せられた(AP)

 ピアノマンついに判明!? 英国東部ケント州の海岸で先月、ずぶぬれのスーツ姿で保護され、全世界を巻き込んでナゾを呼んでいた「ピアノマン」に、ついに身元判明に関する有力情報が寄せられた。

 英大衆日曜紙メール・オン・サンデーなどが伝えたところによると、ピアノマンは、チェコのロックバンドでキーボードを担当していたトマス・ストルナドさんではないか、という有力情報が寄せられたという。Tomas Strnad

 ストルナドさんは公表されたピアノマンが演奏している写真と非常に似ていることや、バンドに参加する前にはクラシックのピアノで修業を積んでいたことなども判明。ストルナドさんの父はプラハの歯科医といい、一緒にバンドを組んでいたという男性も「彼は英ロックバンドが好きで、英国に行くのが夢だった」と証言しているという。

 ピアノマンに関しては、これまで全世界から1100を超える情報が寄せられていたが、いずれも本人と特定するには至っていない。

 病院によると、ピアノマンは今もおびえた様子は変わらず、いまだに一言も話していないという。医師らは記憶喪失の可能性を指摘。原因を特定しないことには本格的な治療は困難としており、今回寄せられた“チェコ人情報”に関して本格調査に乗り出すことにしている。

*チェコ人はのちに自ら名乗り出て、別人と判明。

参考記事

CNN29日

身元不明者捜索サイト

病院

IOL30日

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ピアノの腕前についての話が全く二分されている。二度目の収容病院ではプロとはいえないという証言があったが、最初の病院では「クラシックに詳しくないから難しい事はよく分からないのだけれど」すごいピアニストだと思った、という証言が多く、これが最初の天才ピアニストという報道に繋がったようだ。演奏を報道に流してもらえればすぐにハッキリするはずで、探す上での条件が変わるから余計な手間も省けるはずだが、録音するかもしれないという医師の曖昧な発言に留まり未だ実現していない。治療上の都合という話もあるようなのでいちがいには批判できない。

個人的にはピアニストというよりポップス的な意味でいう「ミュージシャン」である可能性のほうが高いように思われる。弾いている曲目の全容が明かされていないので何とも言えないが、チャイコフスキーのバレエ曲「白鳥の湖」のピアノ編曲版というのはよほどの歪んだ思い入れがなければ普通はピアニストが真っ先に取り上げる曲ではない。通常はショパンなどの最も練習し最も弾いてきた曲が思い浮かぶだろう。そのうえジョン・レノンを始めとするポップス系の曲も弾いているそうであり、とすればそのての曲をステージでスポットライトを浴びてグランドピアノで弾く(最初に描いたピアノの絵は影の付き方からスポットライトを浴びた状態のグランドピアノ、即ちステージ上の情景と推測されている)ことはyoshikiかピアニスターでもないかぎり到底考えられない。但し、イギリスはクラシック音楽受容の歴史の古い土地柄ではあるものの、やはりこの半世紀でポップスの台頭により人口は減ってきており、この病院にも彼の弾く曲(大半はクラシカルとは言われている)が何なのかわかる人間がいないから、ポピュラーな白鳥の湖とかジョン・レノン、ビートルズ等しか判明しなかった、それだけのこととも思われる。もうひとつ気になったのは、ちゃんと楽譜を使用しているという点である。楽譜無しでいきなり病院のピアノで弾きまくるという報道だったはずなのに、その全身写真の手には楽譜が携えられている。治療上ピアノを弾かせるのが一番いいと判断され、病院の判断で与えただけとは思うが、気になった。ちなみに音楽を聴く基本であるが「巧い演奏」と「心を打つ演奏」は違う。ピアノマンの音楽はたぶん後者なのだろう。そしてクラシカルな世界で一流のプロであるということはこの両方を兼ね備えているということである。


テレビを除けば日刊スポーツがいちばん情報が速いようだ。BBCやロイターの英文ニュースより速く現場の情報が入ってくる。

(以下引用)2005/5/20
謎のピアノマン、カナダから?
 英南東部シアネスの海岸で保護された身元不明の「ピアノマン」について、19日までに計850件に上る情報が寄せられ、うち可能性のある約300人について担当者が調査している。そんな中、19日の英紙デーリー・ミラーは、カナダ警察当局者の話として、昨年トロントから姿を消した「フィリップ・ステューフェン氏」の可能性があると伝えた。同氏は99年、大けがをしてトロント市内の病院に運ばれた際、記憶喪失と診断された。その後、不法滞在などで有罪となり、昨秋に出所した後は行方が分からなくなったという。当局は「金髪や顔がそっくりだ」としている。(ロンドン=鈴木雅子通信員)

(引用オワリ)

しかしテレビ報道を見る限り別人に見える。髪型の違いはいくらでもどうとでもなるとしても、鼻の形が違う。あんな鷲鼻ではない。(注)他にもフランスの失踪した大道芸人ではないかとか北西部で80年代に活動していたウツ病のミュージシャンではないかとかカンタベリー大の同級生だとか沢山問い合わせはあるが、いずれも断定できる証拠は無いようだ。スウェーデンの若い才能あるピアニストが失踪、かれは来月ロンドンのウィグモア・ホールで演奏するはずだった、という情報もあり、ピアノマンがスウェーデン国旗らしきものを描いていたことから(記憶喪失者が国旗を描くなんてよほどの愛国主義者だな)可能性が示唆されてもいる。(注2)

(注)この男は以前全く同じように記憶喪失で血だらけの顔をして現れた男で「名無しさん(Mr.Nobody)」と呼ばれ話題になった。身長が10センチ違い、同一人物ではないと断言されている。ちなみにこの人物の記憶喪失も事実だったようだがその後失踪を繰り返し整形手術も受けており(鼻はそのときに治されているらしい)不可解である。不法滞在で放り出されて以来行方が知れていない。のちにゲイモデルとして現れた男に酷似しており同一人物視されることもある。このモデルの顔は確かにピアノマンに似ていなくも無く、中間をとったような感じである。不可解に思ったのはMr.Nobodyも曲名であり、あだ名がアルバム名や曲名という点で共通点を見出させようとする意図を感じなくも無い。共通点といえばタグを切り取るという状態にも共通点が見られるそうだが、医師によれば自閉症患者が自分を隠すために自ら切り取る可能性もあるそうである。Mr.Nobodyの奇矯な行動を見ているとそういった原因による自作自演感もする。

(注2)のちに自宅で発見されたためこの説は否定されている。


映画にそっくりという説もある。未だ健在の精神病ピアニスト、ヘルフゴッドの半生を描いた「シャイン」のDVD宣伝説についてはきっぱり否定のコメントが出ている。問題の「ラヴェンダーの咲く庭で」であるが、日本では配給元が否定しているものの、今回の事件を映画に絡めて宣伝してくれという文書がマスコミに出回ったという事実もありやや混沌としている。

漂着の喋らない演奏家という設定は似ている。ただ、この映画には原作がある。西インド諸島の植民地生まれの英国作家ウィリアム・J・ロックのFaraway Storiesの中の一編である。従ってパターンとしては英国のそのての人々には良く知られている可能性もあるのである。ここから模倣犯の推論も成り立つ。


以下オフィシャルサイトから。
ラヴェンダーの咲く庭でLADIES IN LAVENDER
2004/11イギリス、2005/6日本公開


(あらすじ前半引用)
1936年、イギリス、コーンウォール地方。ヨーロッパでは、歴史的な大きな出来事が起ころうとしていたが、ジャネット(マギー・スミス)とアーシュラ(ジュディ・デンチ)の姉妹はいつもと同じように静かな日々を過ごしていた。
そんなある日、1人の青年が嵐の去った浜辺に打ち上げられる。アンドレア(ダニエル・ブリュール)と名乗る異国の若者を、2人は我先にと競って看病するが、時がたつとともに彼は特にアーシュラにとって大きな存在となっていくのだった。徐々に英語を覚える彼との楽しい会話、その指が奏でる美しいヴァイオリンの音色への驚きを味わいながら、叶うわけもないと、もう何年も心の奥底にしまいこんでいた感情がにわかに沸き起こる・・・。


内容は古典的な感動作品。いかにも短編小説的な無駄の無い構造で、今回のピアノマンのシチュエーションとの共通点はどうも最初の設定にすぎないようにも思える。映画を見ないと何とも言えないだろう。



***
濡れたピアニスト
05/18/2005

「ぬれぬれピアニスト」とブログに書いたら評判悪かったのでこういう題にしました。つか、こんなニュースが朝日の朝刊で大きく扱われていることにびっくりした。私は昨日早くにexciteのびっくりニュースで知り(さいきんはめんどくさくて海外サイトは読んでない)、その後いろんなとこで写真や記事を目にするようになって結構話題のニュースなんだなと思った。

知らない人のために。イギリス南東部の砂浜でふらふら歩く一人の男が発見され保護された。かれは20代から30代くらい、きっちり正装していたものの全身ずぶ濡れで、何らかのショックのせいであろう、一切の記憶を失っていた。それだけなら普通の記憶喪失者なのだが、紙を渡すとグランドピアノの絵を書き、ピアノの前に座らせると立派な演奏を行ってみせたのである。その中には自作と思われる曲も含まれていた。不幸なピアニストはこうして逆たずね人状態のまま保護されつづけており、ヨーロッパじゅうから問い合わせが相次いでいる状態だという。

朝日の記事で目新しかったのは、衣服のタグの一切が切り取られ、身元を確認できるものが徹底的に失われていたという事実である。うーん、どうもキナ臭い。マフィアの匂いがする。船の上のピアニストじゃないけど、何かマフィアの組織に雇われてお偉いさん相手に演奏を続けていた「闇ピアニスト」が、何かの理由で組織を追われ、どこからか泳いで逃げてきたか、捨てられたかしたのではないか?

あんまし人の不幸を推理小説するのも良い趣味とは言えないが、捏造含めいろんな可能性に想いを巡らせてしまう「雨だったはずの」晴れた東京の私。


(いい音出してるのかなあ、という書き込みに対して私)

これ、写真出杉なんですよね〜。
何種類見たかわからない。 (但しスウェーデン国旗など他の絵の写真は殆ど出てこない。これも不思議だ。)

いい音という言及はどこにもありませんでした(苦笑
一流だったらそう書くでしょうし、多分・・・


でも思ったんですけど、タグがついていてもそこにクリーニング屋や幼稚園児みたいに名前が書いてあるわけではありませんよねえ。切り取っても意味がないような気も。

(タグは製造元や卸元などの特定を行えるため警察では身元確認の手段として一般的であるとの見解に対して)

なるほどー。なんとなくブランド服を着ているイメージがあったので、それなら国などあまり関係ないかな、と思ったのですが、アシがつくような既製服を着ていたとすれば超一流の扱いをされていたわけではなさそうですね。。どこかの田舎の国で活躍していたピアニストが同業に嫉妬され依頼を受けた組織に拉致投棄されたのかな?

それにしてもここへきてスウェーデン国旗の絵を書くとか、いささか出来過ぎの感アリです・・・・


やっぱり臭くなってきました。

・佇む写真はプロがセッティングして撮影した可能性あり(みの「朝ズバッ!」)・・・黒目にレフ板の反射が映っているよう(某カメラマン)。記憶喪失で怯えている人がポーズをとって手に楽譜を持っているのも演出ぽい。座って怯えている写真もポートレートみたい。


・絵が想像で書くには上手すぎ。この構図は素人がとる構図ではない。筆致は素人なのに。写真を見たら簡単だろう(某画家)。


・昨年11月公開の映画「ラヴェンダーの咲く庭で」に楽器の差があるにせよ設定が酷似(日刊スポーツ)


・収容経緯が二転。最初に収容された病院から失踪し、のち路上で再び保護されたという事実が伝えられていなかった。二度目の保護では病院内のチャペルにあるアップライトピアノに強く興味を惹かれ演奏していたが、白鳥の湖(注:ピアノ曲ではない)やジョン・レノン、自作と思われる曲を熱中して弾いているものの演奏自体は粗くプロとは言えなかった(みの)


・腕前はアマチュア(日刊スポーツ)

どうでしょうね。


(オワリ)
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ところでこの件で某国のコミュニティ・ブログを見ていたらジャック・カラオケというHNの御仁がいた。大昔ロンドンで張り紙にKISSのメイクの似顔絵に「KARAOKE!!」とおどろおどろしい文字が躍っていたのを思い出した。当時は大爆笑したものだが今はぜんぜん普通。カラオケは世界共通語。5月14日公開。  

<8月末記>デイリーミラーのスクープからピアノマンの正体は自殺未遂のドイツ人だったということが判明。ピアノは単音をただ連打するくらいの腕。既に帰国している。