第86夜、新旧妖怪数題

「とびあがり」
某学校の階段に、さびしげな少年の座ることがある。近寄ると、ぽうっと宙に浮き上がったかと
思うと、にやっと笑って振り返る。昔この階段より落ち命を失ったモノの名残という。

「覗き婆」
部屋の襖や玄関の戸を少しでもあけておくと、目付きの鋭い小さな婆が覗いて睨み付け、ぴしゃ、
と閉めていく。

「指突き」
不意に背中をつつかれる。振り向いても誰も居ない。寝ていても起きていても、歩いていても座って
いても。

「廻り男」
夜半、急に金縛りになったかと思うと、自分を中心に、室内を、何者かがぐるぐると飛び回る。
窓から入ってきて、窓から出て行くと解ける。黒い影のようだが気配だけのこともある。
あるいは気がつくと、自分自身がぐるぐると回されていたりもする。
いろいろなところで出会う。西表島でも遭った。

「ふらり」
車が通るとき、何もしないのにひとりでに体がふらりと揺れて、飛び出し轢かれそうになる。気に
していることが特に無く、ぼうっとしているときに多い。三宅島で度々遭った。

「天吊シ」
山梨は北巨摩郡下の或る家に出る怪。夜中にたびたび天井から、稚児らしきモノが降りて出る。
これを天から吊るされた子として「天吊シ」と呼ぶ。