第68話、死の音楽

エルヴィスの死のコードは有名だがここでは死にまつわるクラシック音楽について書いて
おこうと思う。
諸説紛紛のモーツアルト「レクイエム」謎の依頼者に対し己の死をはっきりと自覚しながらも
書き連ね、絶筆に終わった作品である。己の死のための「レクイエム」であるかのようだ。
リストは親友のワグナーがヴェネツイアに赴いたとき、「悲しみのゴンドラ」という曲を
書いた。内容はまるでワグナーの来るべき死を悲しむかのようなものだった。翌1883年、ワグ
ナーの死に際して彼は改めて「R.W.・・・ヴェネツイア」というピアノ曲を書いている。
チャイコフスキーは、19世紀も終わる頃、純管弦楽の最高傑作「悲愴交響曲」を書いた。
終楽章が緩徐楽章という構成は独特の陰鬱さをかもし、心臓の止まる音までを克明に描いた
終端は、何か異界的な恐怖を与える。作曲家は初演後、突如頓死した。
マーラーは愛児と妻アルマとの幸せな生活の中で、なぜか「亡き子をしのぶ歌」という歌曲集
を書く。アルマはその不吉な題名に強い反感を示す。
愛児はその後、突然死にみまわれた。(1991記)