第66話、小龍のこと

小龍が大きくなり天へ昇る話というのが多くある。器物中、屋根上、床下、さらには身体
の中より小さな蛇が出て、見る見るうちに大きくなり、激しい雷雨と共に昇天する。
いずれもこのような結末になる話、もとは中国、そして江戸時代の日本にたくさんある。
何かの根拠あっての話なのだろう。龍に”成る”ものには海の巻貝、空の鳥、あるいは
山の土中に潜む”ほら貝”が「ぼわん」という爆発音と共に空に上がり、黒雲に吸い込ま
れる。龍のほとんどは青天の霹靂・不意の稲妻や竜巻、虹のたぐいなど複数の空中現象が
誤認されたものだろうことは言うまでも無いが、それでも何か面白いものが混ざっている
気がする。何かにまたがった童子が先導する雷雲に龍が蟠るなど何か江戸よりも平安の世の
鵺のような雰囲気もある。(1991記)