第65話、布怪

中国はク州の城の或る池から、夜になると一疋の白布が出てきて、ネリギヌを地に横た
えたようになっている。そして、通りかかった者がそれを拾うと、ぐるぐる巻きにして、
水の中に引き入れてしまうという。”一反もめん”の類か。
日本では狢(むじな)、山あいの一本道を夜半に歩いていると、長い帯を天から垂らす。
夜中の暗い山道に、天からとほうもなく長い帯が垂れている。ただそれだけなのだが。
幼い頃、まっくらな洗場に手を洗いに行くと、窓外にハンケチほどの白い布が2,3枚
ひらひらと動いているのが見える。そのようすが何とも不気味で、翌朝改めてその窓を
見ると、ぎっちりと物置に接していて布のはためく隙も無い。果たして昼間の窓に布は
無かった。あれは何だったのか。今でも不思議に思う。(1991記)