第60夜、田螺のこと

文化の初秋、石川氏の親族の家の池で田螺が蓋を開けて水中に遊んでいたところに、一尺四寸もある蛇が出て、蓋に口をつけ吸い喰わんとする。田螺、急に蓋をしめ、蛇の下あごを咥えると、蛇、苦しんでのたうちまわるが離さなかった。日暮れ頃、蛇は終に力尽き田螺は遂に水中に落ち難をのがれたという。
これと同じことが起こったと、数年前聞いた。テレビで見るに、やはり田螺が蛇を喰い返した話だった。

江戸も今も、奇事を奇事と感じ人に伝える人の心は変わらない。1990記