第三十九夜、牛の玉

寺院のご開帳などのとき、霊宝として「牛の玉」を見ることがある。真っ白で、毛など生え、自然に動く玉で、不思議であるが何の役にも立たない。

隠岐の国では野に放し飼いの牛 大変多く、佐久間何某先生はご用でそこへ行かれた時、牛の玉 生ずるをまのあたりにした。野に寝ている牛あり、その耳の中からか口の中からか詳しくは解からなかったが、四寸から三寸の丸いものが出てきて、牛のまわりを走り回っていた。牛飼いがそのあたりにあった茶碗のようなもので取り押さえ、何であるかとひらいてみると、牛の玉であった。動くものであったが走り回ることはしなくなった。

牛の腹中の生物でもあるか。それを取って後も、牛には異変はない。

ケサランパサランの類か。江戸の話し。