第十九夜、南北お岩の洒落噺

南北の四谷怪談に、伊右衛門が弊したお岩の死骸を「戸板へ打ち付け姿見の川へ流して直ぐに水葬」という台詞があって、後にこの戸板が深川の隠亡掘へ流れ寄るくだりがある。姿見の川とは雑司が谷の辺りに在るを、遥々深川迄流れ来るとは心得ずと、ある人南北に尋ねたところ、南北からからと笑って、

そこが怪談なり

と語った。これは坂野氏の話し(「青々園」、内外古今逸話文庫明治27年刊より)