第十四夜、骨壷

埼玉は深谷にある正法寺での話。檀家の子供が亡くなり、妙定尼と妙寵尼という二人の尼僧が、骨壷を祭壇に安置し、経をあげはじめた。すると、コトリ、と音がする。妙定尼は祭壇の一点を見て、思わず声をあげそうになった。

骨壷の蓋があき、そのなかから、3歳ほどのオカッパ頭で目のはっきりとした小児が現れた。そして、二人の尼僧のまわりを、泣き声をあげて走りだしたのだ。泣き声は堂内にひびきわたり、住職や他の男僧が駆けつけたほどであった。

檀家に問い合わせても、心当たりが無い。寺では経をあげ、ねんごろに供養した。同寺では白装束の老婆や女性が出没し、裏の、元本堂があった林は、近所では昔から幽霊が出ると評判であったという。