第十一夜、幽霊を煮て喰いし事

文化2年の秋のこと。四ツ谷の者、夜半に用事があり歩き行く道中、白い装束をした者が先に立って行くので、よく見てみると、腰から下は見えない。すわ幽霊か、と跡をつけていくと、ふっとふりかえる、その顔、中央に大きく光る眼が一つのみ。すかさず抜打ち、幽霊はきゃっと言って倒れた。取り押さえとどめをさすと、それは大きな”ごい鷺”。そうして鷺をかつぎ帰り、若い友を集めて調理し食べてしまった。これを「幽霊を煮て喰いし話」として、もっぱら巷で評判となっている、という。