第十夜、ウグメ

三宅島には七ツ山と呼ばれる場所がある。その名にはいわれがある。ある晩、七つになる子供が泣き出し、いつまでたっても泣き止まない。親は怒って、こらしめのために、外に出して戸を閉めてしまった。

ウエエン、ウエエン・・・

しばらくたって、泣き声がきこえなくなったので、もう よかろうと外に出てみると、子供の姿が見えない。近所を探してもいない。半鐘が鳴り、村中の騒ぎとなった。しかし、夜のうちには遂に見つからなかった。

”ウグメ”のしわざだ・・・

誰からともなくこうささやかれるようになっていた。”ウグメ”とは何なのか、誰も知らない。しかし、ともかく恐ろしい妖怪であるということは、誰もが知っていた。

そうだ、”ウグメ”に違いない。

昼頃。変わり果てた子供の体が見つかった。手や足がもぎれ、体はバラバラになり各々別の場所でみつかった。上顎のみつかった所がウアゴツソウ、腰のみつかった場所が「下腰」、股のみつかった場所が「股が平」という地名になって、今にも残っている。

”ウグメ”に食われたのだ・・・

そうだ、”ウグメ”だ・・・

”ウグメ”・・・