怪物6(ハ行)

ハイドビハインド

人の後ろに立ち、襲い掛かるという怪物。必ず「背後」につくため、その姿を見たものはいないという。アメリカ西部開拓時代のホラ話。

ハオカー

雷の精霊。

ばく

もとは中国の伝説上の生き物。悪夢を吸い取り良い夢をみせるというので昔は信仰された。

白沢

ハクタク、中国の伝説上の生き物。雪男(野人)と混同されるが獣身で描かれた絵も多い。

バシリスク

鳥のおばけ。火をはく。

パスハ

湖底に眠る竜の一種。

発凶

秦中は地下4.5尺掘っても水脈には達しない(ためにミイラ化する可能性が高い)。鳳翔以西の俗では、人が死んでもすぐにはほうむらず、野ざらしにして遺体が朽ちるのを待ってはじめて葬する。そうしないと「発凶」する、すなわち凶悪な力をはっすると信じられていたのだ。一度”地気”を得ると、消化しきれないまま葬られた体は全身に毛を生じ、人家に入って災いをなす。白いものを白凶、黒いものを黒凶と呼ぶ。

・・・「野人」伝説と「キョウシ」伝説が混合されたものと思われるが、キョウシ(朽ちず何百年もそのままの死体、すなわち立派なミイラ)の体に「毛」が生え人を襲うという話しは広く伝わる。地衣類のしわざだろうか?

ババイ

エジプトにおいて悪い死者を食らう役についているのはワニ頭の「死者を食らうもの」である。これを補佐するものが、単に「恐ろしい」といわれるこのババイである。姿もハッキリせず、どのようにおそろしいのかもわからない。プルタークはティターンのひとりと同一視している。

花子さん

最も有名な都市伝説のひとつ。小学校の女子トイレの一室の扉を、三回叩いて「花子さん」と呼びかける。すると「・・・はあい・・・」と返事が返ってくる。誰もいないのに・・・

一説には元話があり、大正か昭和初期、乱心した母親に惨殺された女の子の見つかった場所が、旧校舎のトイレの一室だった。あるいはやはり同じころ校舎が崩れ子供が生き埋めになる事件があり、トイレにいた少年がギセイになった、それが出たということであるが、まことしやかな検証がなされたりするものの確証は薄い。

バロメッツ

中央アジアに羊のなる樹がある。綿花を曲解したヨーロッパの伝説のようである。

バンシー

家族に凶事がある前兆として、「きゃーっ」という叫びをあげる。声だけの妖怪。

ヒエラコスフィンクス

エジプトでは通常獅子頭とされるスフィンクスにも種類があり、神神の姿同様獣身に別の獣頭がつく姿が描かれている。これは隼の頭をしたスフィンクス。

ひき

古蝦蟇は化けて怪異をなしたり、家屋の床下に棲んで家人の精気を吸う。江戸の怪談にしばしば出てくる。麻布には逆に火事を消し止めた蝦蟇の伝説があり、今でも外国人の多く棲む高級マンションの中庭に、蝦蟇池というものが残って古をつたえている。

ピグミー

本来コロポックルのように「小人族」をさす言葉である。

鼻行類

まさに謎の動物群である。もちろん一部には冗談も入っていようが、全部が全部嘘とは言い難い「学術的迫力」を持っているシュテンプケの著作「鼻行類」には、数々の幻の「鼻行類」たちが記されている。話しによればこの絶滅種はハイアイアイ群島にのみ発見された種で、核実験により群島自体が消滅するまで、研究所が建てら研究がすすめられていた。全てが鼻を重要な触手とするこの動物群は、島では最も支配的な生態系の頂上にいたという。

ピシャーチャ

やはり死骸をくらう悪鬼のひとつ。棺を割りばりばりくらう。

飛天夜叉

キョウシ(ミイラ)は長い年月を経ると変化し妖物となる。これもその一つで、熊ほどの大きさで夜間に人家の作物を荒らす。全てのキョウシは久しくすればよく飛び、もはや棺の中にはいなくなる。全身に長い毛を垂らし、出入には光がある。「飛天夜叉」はその中でも強力な種族で、雷撃か鉄砲でしか倒せない。福建省の山間の民は、これに出遭うと漁師仲間を呼び集め、木の上に待ち構えて撃つ。直隷安州の某山中でも小児をとって食う空飛ぶキョウシがいた。村人はその穴を掘るが深くて測りようがなく、某道士の方術で鈴を振ってこれをしとめたという。ちなみにかれの話ではキョウシは変じて旱魃となり、さらに変じてコウとなる(別項)。

・・・ムリヤリ話しのつじつまをあわせて妖物象を解明あるいは説明しようという御仁は古今東西枚挙に暇がない。この老人もさぞ面白い人物であったことだろう。

ひでり神(旱魃)

一本足に一本手、毛だらけ人面の異形。ひでりの神。

飛頭蛮

ろくろ首。首が抜けてとびまわることから飛頭とよばれた。夜間首の抜けた体をこっそり隠すと、朝戻ってきた頭は狂乱し死する。

人魂

静かに長い尾をひく丸い玉の姿が一般的なイメージであり、それはちらちら瞬かされる鬼火や大きな破裂音を伴う火球とはやや趣を異にするものといえよう。すーっとしている。

ヒバゴン

日本の雪男伝説としては唯一のもの。比婆山中で見かけられたことがあることからこの名がついたのだが、不明瞭な一枚の写真だけでしか知られておらず、ツキノワグマの誤認の可能性も否定できない。ちなみに一番話題になった70年代中盤は空前のオカルトブームであった。

ヒュドラ(ヒドラ)

たくさんの蛇首を持った古代ギリシアの怪物。

蛭子(ヒルコ)

イザナギ、イザナミの二神が混沌の地に国産みのため降り立ち、最初に産んだ神がヒルコであった。だが骨の無いふにゃふにゃとした体を見て、二神は葦舟にのせて川に流し捨てた。ダビデ伝説などに通じる川流しの話だが骨無しの異形という点異なっている。

ファルファデ

18世紀アビニヨンに生まれたベルビギエという男、悪意ある妖精との格闘に一生を捧げた。彼が「小悪魔(ファルファデ)」と呼ぶ見えない悪魔は、最初寝室に現れた円盤に端をはっした。無数の星を撒き散らし、天使のラッパが鳴り響く。雲に乗った精霊が飛び去ると、死者の棺が次々と割れる、そんな終末的なビジョンが彼を幻覚の世界にいざなう。彼が働く病院では、その奇行に評判となった。勤務中にも医者のところへ行き、ファルファデがかれを苛める、と訴える。足の裏をくすぐる、不能にさせる、ペットのうえに尻餅をつかせて殺したのもファルファデのせい。百匹のファルファデを殺すと英雄になるという妄想を抱き、悪魔をやっつける方法を何千枚もの紙に書き付けていた。病院の名物男になったかれは、56のとき悪魔払いといってホテルの暖炉に牛羊の内蔵を投げ込み心臓に針を打ち込んで、野次馬のかっさいをさらった。本当に病院に入れられてのち死んだが、生涯ファルファデ退治を諦めなかったという。天使の幻を見たかれは、神に悪魔を倒す使命を与えられたと信じこんでいたのである。

イタチのような小動物ともいわれることから、もとはモモンガのような空飛ぶ小動物を誤解したものだったかもしれない。夜間野を歩いていると急にふろしきのようなものが頭からかぶさって、血を吸うといわれる。

負屍

人の頭あるいは人の首無し死体が、不意に空から落ちてきたり、背が妙に重いと振り返ると、荷の先にひっかかっていたりする。あやしく思って殴り付けたり転がしたりするときえてしまう。由来もいわれも何もわからない。リョウサイシイの中の一節である。

おどろかせるだけの所は日本の妖怪に良く似ている。

二口女

貞女を妻に迎えたと男は大喜びであった。食事時にも殆ど飯を食わず、人が心配するほどであった。だがそのうちおかしなことが起こる。米びつが見る見るうちに空いていくのだ。余りの減りようにいぶかしく思った男は夜中に何かをがつがつと食らうような音に目を覚ます。台所を見ると妻が頭の後ろにあいた大きな口に、次々と握り飯をほうり込んでいく姿があった。妖怪フタクチ女の一節、江戸の怪話。

プレータ

死者はプレータになり次いで死体を食う悪鬼かそれを倒す精霊になる。生前の行いが死後の良悪を決定するわけである。

ブロンティーデス・フェノメノン

何もないのに突然爆音が響く。

かつて空港や軍需工場で、あるいは軍隊の基地や秘密工場の近辺で起こる音を呼んだこともあったようだが、住宅地など人気の多い場所で起きた例も、この東京で、ある。

別項「ぬべらぼう」にも書いた肉人の呼び名。慶長14年4月4日、徳川家康が駿河に住んだ時の或る日の朝、庭に小児くらいで手はあっても指は無く、その手で天を指し立っている者がいた。家臣たちは騒ぎ立て追い回した挙げ句、城から離れた小山に追いやってしまった。それを或る人聞いてしきりに惜しがるには、これは白澤図にある封というものである、これを食うと多力になって武勇に優れるという仙薬だ。何故捕らえて主君に食わせなかったのだ、主君に差し上げなくとも仕える家臣たちが食べれば、皆武勇に強くお役に立つべきものを、と言った。牧氏つたえるこのエピソード(異聞があったように思う)の頭には「この怪物は切支丹なり」としている。