ウェンディゴ

カナダの雪男。雪男といっても日本の雪女と同じ「妖怪」「妖精」「土地神」のたぐい。身長は5メートルにも達し、足は速く、吹雪とともにやってきてインデアンの村人をさらって食う。これは雪そのものの恐怖の投影に違いなく、であれば雪女の遠縁といえよう。尤も醜い骸骨のような顔は雪オンナとはほど遠いが。一つ気になるのは、目にもとまらぬ速さで移動した後に残されるという大きな足跡である。この足跡は「悪魔の蹄」「一本ダタラ」、そして「雪男」そのものと共通する残留物だ。混同したのだろうか。

ヴォジャノーイ

スラヴの水の魔物。人間よりひとまわり大きく、ふつうは大魚やカエルのようで緑の髭や苔をつけている。しかしいろいろと化けることもできる。彼等は新月に生まれ、満月で成人し、すぐに老いていく。水底に宝石などでできた宮殿を作って住んでいるが、流れを塞き止める水車などが作られると、壊そうとしたり、日照りを続かせたりする。人々はそこで生け贄を捧げる。わるいことに彼等は人間が好物である。夕方から動き出すので、水辺を遅くまで歩いていると引き込まれるかもしれない、という。水から長い間は離れられない。

ウォーター・リーパー(ラムヒギン・ア・ドゥール)

英国の人食い水跳び蛙。とうてい常識では考えられないダイナミックな姿はインパクトがある。

ウシマジムン(牛お化け)

ウシマジムンは牛のように大きくて真黒い。”マジムン”は沖縄ことばで、奄美以南獣肉を食べる習慣がある地域には必ずつきまとう「死んだ家畜」の精霊だ。このウシマジムンは何しろ大きくて通行の邪魔というほか、何もわかっていない。真っ黒な食肉牛が路上に寝転がって邪魔なのは、真昼であれば良く見られる風景だが、夜逃げ出した牛と考えるには余りに異様である。本土の妖し狸の伝承やヌリカベに近いお化けかもしれない。何の目的もやる気も持たないウシマジムン、バブル期にはたくさん繁殖していたものである。

お産でしんだおんなのお化け。赤子を抱いてくれとせがむ。赤子を慈しむ気持ちだけがのこったのだろうか。哀しい。

別項「ウグメ」は伊豆半島から島々に広く伝わる、もとは「ウブメ」と同じものらしい。

馬の足

福岡のあちこちに出た。古土塀から枝を出している木の枝に、夜になると馬の片足が下がってぶらんぶらんしている。その下を気付かずに通ると蹴飛ばされる。こういった化け物は他にも多かった、という。

海のアルゴス

イクチュオケンタウルスと同様、これはオラウス・マグナスが海中に入ったときのアルゴス(別項)の姿を考案したものである。海の「百目」は目が8つだが、残りの92個はどこへいったのだろうか。

海の修道士

ノルウェー沖で昔々にとらえられた。スコットランド南東部フォース入り江でも見つかったことである。

海の司教

1531年ポーランド沖で一度だけとらえられた。物は話せないが、ミトラを被り、法王の教書によって称えられ、その地位についているのだという。

・・・いったいに宗教というものは、わからない。

海坊主

洋の東西を問わず出現する大海妖。海の怪異の総称的な呼び名であり、蜃気楼の不思議や大嵐の恐怖を象徴的に捉えたものであろうか。船幽霊や幽霊船(シンメトリックですね)にも似た様子が有る。巨大な未知なる海の化身。

”死者を食らうもの”

古代エジプト人は死後、神神の陪審の前で判決を受けると考えた。チベットなどにも似た伝承があり、十王信仰にも通じる「生前悪事のツケを払う」戒めから生まれた世界共通の幻想だ。エジプトでは神の前で罪が無かったことを誓わねばならない。もし嘘をつけば四十二人の陪審員が「死者を食らうもの」に引き渡す。別項のババイはその補佐役にあたる。

エルフ

イギリスの妖精の一種。かれらにはグレムリンなど沢山の亜種がいる。イギリス産フェアリーである「ピクシー」にくらべ、長身でずる賢いものとして描かれることが多い。エルフの語源はドイツ語で夢魔をあらわすアルプからきている。彼等には光のエルフと闇のエルフがいる、とは新エッダによる。

冤鬼

未婚の女性が世間からあらぬ噂をたてられ思いつめて自害したときには、浮かばれず冤鬼になると朝鮮に伝えられる。この鬼は地方長官に直ちに祟る。また男でも冤罪で死んだ者は冤鬼となり地方長官に祟るという。地方長官も大変だ。ちなみにかつて朝鮮では地方長官が行政も司法も担っていた。

焔口(餓鬼)

口から火を吹き飛んでいる虫を焼いては食らう。もとは亡者であるはずの餓鬼に妖怪的要素が加わっているところが面白い。「火吹き」は”ひょっとこ”にも通じる特殊能力だ。餓鬼は「ひだる神」と同一視されるが、このエンクは、まさか人に取りついて火を吹かせるなんてことはないだろう。

エンコウ、シバテン

河童の一種。

・高知県幡多郡の十和村、野々川などに伝わる

・夜、女が川を渡るとき、男に化けて迷わせる

・手が丸い(○ラえもんみたい)

・相撲を挑む。人間は木や石にぶつかるなどしてへとへとになる。

・金物、タデ、そして人間の唾に弱い

・顔色は真っ赤、一説に真っ黒

・大きさは赤ん坊くらい、頭はばさばさ、皿

・手はどこまでも伸びる

以上、様々な妖怪要素が絡まっているのがわかる。手がゴムのように伸びるとは中国伝来か。手が丸いのがドクトクだ。

一本の白糸が宙を舞う。

一本、二本と増え続け、

いつしか無数の糸に囲まれる。

日本の龍は翼が無い。前足が翼になっている応龍は例外だ。鳥が「成った」ものであろう、という。

フロリダの大蛸

1896年11月30日、二人の少年がフロリダのセント・オーガスティン付近のアナスタジア浜で巨大な骨のようなものを発見。砂から出ている部分だけでも7メートル以上あった。そして数日後ウィルソンという人が砂を掘っているときに動物の触手・・・ひとつは8メートル近くもあった!・・・を発見。これは5トンもあり、地元の医師ウェッブ博士はクジラかタコであると考え、イエール大学動物学の教授宛てにサンプルを送った。ヴェリル博士はこれをタコと断定したがそのあとマッコウクジラであると説を翻した。五十年もの歳月が流れフロリダ大学の生物学者でジェナロという人が再びこのサンプルを分析することを思い立ち、その結果クジラでもイカでもなく紛れも無い蛸であると発見、「巨大蛸」に関する論文をナチュラル・ヒストリー誌に発表。60メートルにおよぶ巨大ダコはヴェリル博士の付けた「オクトパス・ギガンテウス」の名を不動のものにした・・・はずである。

大蛸はバハマでよく目撃されそこからはこばれてきた可能性もある。

・・・「幻の動物たち」文庫版上下巻より、最近復刊されている。

お小僧火

山寺の小僧が山上の灯篭に灯火をともす途中ころげて命を落とした。以後誰も付けていないのに灯篭のあたりがぼうっと光るようになった。よくある伝承の一つ、ではある。


亀体に長い頚、人の顔の化け物。

小松和彦先生の著作を読みましょう。

オレンジ

現代アメリカの妖異。オレンジ色の髪をしていて、ブルーブック13番という幻の公式文書に書かれていた宇宙人種のひとつという。報告者クーパー氏が本当のことを言っているかどうかは別にして、イギリスで起きた「ウォルトン事件」というユーフォー遭遇に出て来る2種類の宇宙人(「灰色の小人」とこの「オレンジ」)が含まれているから面白い。この種類は「奴隷種」として描かれている。

以上「ア行」

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