<東京窟めぐり1>

威光寺・弁天洞窟

東京都稲城市は「よみうりランド」の裏、緑深い山裾にそれはあります。威光寺は穴澤天神社の別当寺として江戸初期頃からこの地にあったといいます。真言宗。簡素な明治3年再建の本堂、市指定文化財の庚申塔などを尻目に奥へ奥へと行くと、小池を渡って降りたところにちいさな煉瓦の門がぽっかり。新東京八景に数えられる「弁天洞窟」です。全長65メートルと比較的小さいのですが、数々の不気味な石仏が佇み、子供なら泣きそうなリアルな大蛇の彫り物がうねり、池あり、起伏・小部屋ありのなかなか変化に富んだ内容。狭い洞内は胎内めぐりの雰囲気満点で、人子一人いないのに、妙な生暖かさを感じます(冬に訪ねたときの感想ですが、夏は涼しいそうです)。もともと古墳時代の横穴墓だったものをもとに彫り広げられたものだそうですが、広大で神秘的な大船の「田谷の洞窟」に比べ、一切の灯りが無く、蝋燭のともし火だけで狭い通路をそろそろ歩む趣向は中仲スリルがあります。密やかで、何か恐ろしげの民間信仰的な雰囲気を感じました。多摩丘陵にはかなりの量の横穴墓が存在していますが、狭い通路はそれらから察するに原形のままのサイズなのでしょう。拝観料が必要。車だと便利ですが駅(よみうりランド)からも15分くらいで歩いて行く事が出来ます。